はじめに|「支援制度は分かった。でも本当に暮らせるの?」
新規就農の支援制度を調べて、こんな疑問が残った方は多いと思います。
「月13.75万円って、少なくない?」
「それだけで生活できるの?」
「家賃・食費・光熱費・国民健康保険料を払ったら残らなくない?」
正直に言います。月13.75万円だけで生活するのは、地方でも厳しいです。
ただし、「13.75万円だけで生活しなければならない」わけではありません。実際に新規就農した方の多くは、複数の収入・支援を組み合わせてこの時期を乗り越えています。
この記事では、「月13.75万円という数字の正しい位置づけ」と「実際に就農者がどう生活しているか」を整理します。

月13.75万円の「位置づけ」を正しく理解する
この資金は「補助的な生活費支援」
就農準備資金・経営開始資金の月13.75万円は、農林水産省の制度上「次世代を担う農業者の就農を後押しする資金」として設計されています。
重要なのは、「これだけで生活することを前提とした設計ではない」という点です。農業収入・配偶者の収入・その他の収入と合算しながら生活することが、制度設計の前提になっています。「農業の収入が少ない初期段階を補う資金」として捉えるのが正確です。
地方の生活コストが低いことが大前提
もうひとつの前提として、地方の生活コストが都市部より大幅に低いことがあります。都市部で月13.75万円といえば家賃だけで消えますが、地方では家賃・食費・外食費が大幅に低いため、実質的な購買力が都市部より高くなります。
対策①|農業収入との合算
就農後は売上が入ってくる
経営開始資金は「就農後」に交付される資金です。就農している以上、農産物の売上が入ってくるはずです。月13.75万円+農業収入が生活費の基盤になります。
ただし1〜2年目は農業収入がほぼゼロのケースも
問題は、就農1〜2年目は農業収入がほぼゼロになる作物・経営スタイルがあるという現実です。果樹(みかん・りんご・ぶどうなど)は、植えてから収穫まで数年かかります。施設野菜(ハウス栽培)は初期投資が大きく、軌道に乗るまで時間がかかります。
一方で、露地野菜・米・葉物野菜などは比較的早期に売上を立てやすいです。就農初期の収入設計は、作物選びと直結します。就農前に農業指導員・先輩農家・農業振興課に「この地域で初期から売上が立ちやすい作物は何か」を必ず相談しましょう。
対策②|夫婦就農で1.5人分の交付を受ける
最も効果的な対策のひとつ
夫婦ともに就農する場合、家族経営協定等により共同経営者であることが明確であれば、夫婦合わせて1.5人分の交付が可能です。(出典:農林水産省 maff.go.jp)
月13.75万円×1.5人分=月約20.6万円。2人分の生活費としても、地方であれば現実的な水準になります。特に夫婦で移住・就農を考えている方には、この選択肢を最初から視野に入れることをおすすめします。
家族経営協定とは
農業を営む家族が、経営方針・役割分担・就業環境などを話し合い、文書で取り決めるものです。夫婦が対等な経営者として農業を行うことを明確にするために締結します。詳しくは市町村の農業振興課や農業委員会に相談してください。
対策③|配偶者の収入との合算
「農業専業」にこだわらない選択
就農初期、特に収入が不安定な時期は、配偶者が別の仕事を続けながら農業を支えるという形が現実的です。
- 配偶者がパートタイムで働く
- 配偶者がリモートワークで都市部の仕事を続ける
- 農業の繁忙期は農業に集中し、閑散期に配偶者がパートを増やす
農業には繁忙期と閑散期があります。冬場など農作業が少ない時期に配偶者がパートを増やす・副業をするという柔軟な働き方が、農業家族には向いています。
対策④|地方の生活コストの低さを活かす
月13.75万円という金額が「地方ではギリギリ成立する」理由は、生活コストの低さにあります。
地方の生活費シミュレーション(概算)
| 費目 | 地方の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃 | 2〜5万円 | 空き家無償の場合はゼロも |
| 食費 | 2〜3万円 | 自家野菜・米で大幅減 |
| 光熱費 | 1〜2万円 | 冬は灯油代が増える |
| 車の維持費 | 2〜3万円 | 地方では必須 |
| 通信費 | 0.5〜1万円 | — |
| 国民健康保険料 | 1〜2万円 | 前年所得による |
| 国民年金 | 約1.7万円 | — |
| 合計 | 約10〜17万円 | 都市部より大幅に低い |
地方では家賃が安く、自分で野菜・米を作れば食費が大幅に下がります。条件が整えば、月13.75万円でギリギリ生活できる水準になります。ただし、車の維持費(地方では必須)と冬場の灯油代(雪国では月1〜2万円増)は都市部にない出費として注意が必要です。

対策⑤|農業法人への雇用就農を挟む
「最初から独立」にこだわらない
新規就農の道は「独立・自営就農」だけではありません。農業法人に就職して給料をもらいながら農業技術を習得し、数年後に独立するルートも有力な選択肢です。
雇用就農の場合は経営開始資金の対象外ですが、毎月安定した給与を受け取りながら農業を学べます。
雇用就農のメリット
- 収入が安定している(月20〜25万円程度が多い)
- 農業技術・経営ノウハウを実地で学べる
- 独立前に地域での人間関係を築ける
- 貯蓄を積み上げてから独立できる
- 失敗リスクを抑えて農業の適性を確認できる
対策⑥|地域おこし協力隊ルートが最も安定している理由
数ある選択肢の中で、地域おこし協力隊として農業系ミッションに就いてから独立就農するルートが最も安定していると考えられます。
なぜ協力隊ルートが安定しているのか
任期中(最長3〜5年):
- 月20万円前後の報酬を受け取りながら農業を学ぶ
- 農業技術・地域の農家との人脈・地域のマーケットを習得する
- 独立に向けた貯蓄を積み上げられる
任期後:
- 認定新規就農者として独立就農
- 経営開始資金(月13.75万円・最長3年)を受給
- 青年等就農資金(無利子融資)で農機具・施設を調達
「協力隊中の報酬(月20万円程度)」→「独立後の経営開始資金(月13.75万円)+農業収入」という流れで、収入が完全にゼロになる時期がない設計になります。
農業系協力隊の探し方
JOIN(ニッポン移住・交流ナビ)やSMOUTで「農業」「就農」「6次産業」などのキーワードで検索すると、農業系ミッションの協力隊募集を見つけられます。

就農前に貯蓄しておくべき金額の目安
生活費の備え
就農初期(1〜2年)は農業収入が少ないことを前提に、生活費の1〜2年分を目安に貯蓄しておくことをおすすめします。月15万円の生活費なら、180〜360万円が目安です。
農業の初期費用
農業を始めるには、農機具・種苗・資材・農地整備などの初期費用がかかります。作物・規模によって大きく異なりますが、数百万円単位の初期投資が必要なケースも珍しくありません。
青年等就農資金(無利子融資)を活用することで、この初期投資を自己資金なしで調達できます。ただし融資である以上、返済計画を持って活用することが重要です。
「農業は資本が必要」という現実
農業は初期投資が大きいビジネスです。「支援制度があるから大丈夫」と安易に考えず、就農前に十分な資金計画を立てておくことが、長く農業を続けるための基盤になります。
まとめ|月13.75万円は「補助」、複数の対策で乗り越える
月13.75万円という数字だけを見ると厳しく感じますが、実態は複数の対策を組み合わせて乗り越えるものです。
現実的な対策の組み合わせ例:
- 単身就農の場合:地方の安い生活コスト+農業収入の積み上げ+就農前の貯蓄
- 夫婦就農の場合:1.5人分の交付(月約20.6万円)+配偶者のパート収入
- 最も安定しているルート:地域おこし協力隊(農業系)→任期後に独立就農
「農業で地方移住したい」という夢は実現できます。ただし、甘く見ずに資金計画・収入設計を事前にしっかり立てることが、長く農業を続けるための第一歩です。
支援制度の詳細については、農林水産省の公式情報(maff.go.jp)を必ずご確認ください。
ロカスモは、あなたの農業・地方移住への一歩を応援しています。




