はじめに|「移住と転職を同時に実現したい」
地方移住を考えているけど、仕事のあてがない。リモートワークができる仕事でもない。でも、移住した先の地域のために働きたい気持ちはある。
そんな方に知ってほしいのが、社会人経験者採用・UIJターン枠という地方公務員の採用制度です。
地域おこし協力隊を経由せず、都市部での社会人経験を持ったまま直接、移住先の自治体に応募できるこの枠は、近年急速に整備されてきています。「移住したい」「地域のために働きたい」という気持ちと、「安定した仕事を持ちたい」という現実的なニーズを同時に叶えられる選択肢です。
この記事では、移住先の地方公務員を転職先として考えている方に向けて、採用の仕組み・試験の実態・準備の方法を整理します。
社会人経験者採用・UIJターン枠とは
急増する「社会人経験者枠」
地方公務員の採用試験には、新卒者向けの一般枠とは別に、社会人経験者を対象とした特別採用枠が設けられています。
かつてはこうした枠は大規模な自治体のみに存在しましたが、令和4年度は全都道府県・政令市の80%以上の自治体で社会人経験者枠の採用が実施されるに至っています。中小規模の市町村でも設置が広がっており、今や珍しい制度ではなくなっています。
UIJターン枠とは
UIJターン採用では、県外・市町村外に本社を置く企業での職務経験が必要となり、現在その自治体等に在住・在勤していないことが条件となることが多いです。つまり、今は都市部に住んでいる人が、移住先の自治体に転職するための枠です。
特別枠は主に、民間企業の経験者の社会人枠・UIJターン枠(都市から地方への転職を含む)・再採用枠などを対象としており、これらの候補者が一般的な採用試験より受験しやすいように設定されています。
実際の要件の例
たとえば、熊本県天草市の2026年4月採用・社会人経験者(UIJターン者枠)では、「天草市外に本社または本庁を置く民間企業・公的機関等における職務年数が、通算4年以上ある方」という要件が設定されています。
自治体によって職務経験年数の要件(3〜5年が多い)・年齢上限・必要な資格などが異なりますが、「民間での社会人経験がある・移住してきた人」を歓迎する枠として設計されています。
一般採用と経験者採用の違い
試験内容が大きく異なる
| 比較項目 | 一般採用枠 | 社会人経験者・UIJターン枠 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 新卒・既卒 | 民間経験者・移住者 |
| 筆記試験 | 教養試験・専門試験 | SPI・軽量化・省略の自治体も |
| 論文・面接 | あり | より重視される傾向 |
| 年齢上限 | 29〜35歳程度 | 40代まで可の自治体も |
| 職務経験 | 不問 | 3〜5年以上必要 |
| 倍率 | やや高め | 枠が少ないため変動あり |
経験者枠の大きな特徴は、筆記試験の負担が軽減されている自治体が多い点です。SPIや一般常識テストに変更されているケースや、そもそも筆記試験がない自治体もあります。その分、面接・小論文・職務経験論文の比重が高くなります。

移住と転職を同時に進める手順
「移住したい地域は決まっているが、仕事のあてがない」という場合の現実的な手順を整理します。
STEP1:移住候補地の自治体採用情報を調べる
まず、移住を考えている市町村の公式ホームページで採用情報を確認します。「採用試験」「職員募集」「社会人経験者」「UIJターン」などのキーワードで検索してみてください。
募集が年1回しかない自治体が多いため、応募タイミングを逃さないことが重要です。採用情報は年度初め(4〜6月)に発表されることが多く、試験は秋頃(9〜11月)に実施されるケースが一般的です。
STEP2:自分が応募資格を満たすか確認する
主に確認すべき要件は次の3点です。
- 職務経験年数:3〜5年以上の民間経験が必要な自治体が多い
- 年齢上限:自治体によって異なる(40代まで可の自治体もある)
- 居住要件:「現在その自治体に住んでいないこと」が条件の場合がある
STEP3:お試し移住・現地訪問で地域を知る
応募前に現地を訪れることを強くおすすめします。面接では「なぜこの地域で働きたいのか」が必ず問われます。現地訪問の経験・地域との接点があると、説得力のある回答ができます。
ふるさとワーキングホリデー・保育園留学・地域おこし協力隊のおためし制度なども、地域を知るための有効な手段です。

STEP4:試験対策を進める
筆記試験がSPIの場合は、SPIの問題集で対策を。論文・面接の準備は、次のセクションで詳しく解説します。
STEP5:採用・移住
合格が決まってから移住するのが基本的な流れです。ただし、現地訪問・住居探しは採用前から並行して進めておくとスムーズです。
面接・論文で問われること|移住者が有利になる準備の仕方
経験者採用の試験では、面接と論文の比重が高いです。移住者としての視点を最大限に活かした準備をしましょう。
必ず聞かれる質問と回答の準備
「なぜこの地域で働きたいのか」
最も重要な問いです。「自然が好きだから」という一般論ではなく、その地域を実際に訪れた体験・地域固有の魅力・地域が抱える課題への関心を具体的に語れるようにしておきましょう。
「民間での経験をどう活かすか」
これまでの職務経験で培ったスキル・実績を、行政の仕事にどう結びつけるかを考えておきましょう。営業経験→移住相談業務、IT経験→行政のデジタル化推進、農業経験→農業支援部門、など具体的な接続が必要です。
「移住後の生活をどう考えているか」
「腰を据えて長く働いてくれるか」を確認する質問です。住居・生活環境・家族の状況について、具体的に答えられるように準備しておきましょう。
論文で差がつくポイント
経験者採用では「職務経験論文」を課す自治体も多いです。
- 過去の職務でどんな課題に直面し、どう解決したか
- その経験から何を学んだか
- 行政の仕事でどう活かすか
この3点を、具体的なエピソードとともに書けるように準備しておきましょう。「抽象的な志望動機」より「具体的な経験の記述」が評価されます。
社会人経験者採用の現実的なハードル
募集枠が少ない
社会人経験者・UIJターン枠は、一般採用に比べて採用人数が少ない自治体が多いです。1〜5名程度の採用枠に複数の応募者が集まることもあります。
一つの自治体だけに絞らず、複数の自治体の採用試験を並行して受けることを強くおすすめします。
「移住前提」であることの確認
UIJターン枠は「移住してこの自治体で働く」ことが前提です。採用後に移住しない・すぐに離職するケースは自治体側の信頼を大きく損なうため、本気で移住・定住する意志がある場合のみ応募することが大切です。
年齢上限に注意する
自治体によって年齢上限が異なります。「40歳未満」「45歳未満」など、上限を設けている自治体が多いです。希望の自治体の要件を早めに確認しましょう。
地方公務員という選択肢の価値(移住者の視点から)
移住と仕事の不安を同時に解消できる
地方移住で最大の不安のひとつが「仕事はどうするか」です。リモートワークができる仕事を持っている方ならともかく、転職が必要な場合、地方の求人は都市部に比べて圧倒的に少ないのが現実です。
その点、地方公務員という選択肢は「移住先で安定した仕事を確保する」という課題を一気に解決してくれます。
地方で最も安定した雇われの仕事
地方において、毎月安定した給与・昇給・賞与・社会保険・退職金が保証された雇われの仕事は、地方公務員以外にほとんどありません。農業・飲食・観光・小売など、地方の多くの仕事は収入が不安定で福利厚生も薄い現実があります。
住宅ローンの審査も通りやすく、地方で家を建てて定住したいと考える方にとっても、公務員という肩書きは大きなメリットになります。
「地域に貢献しながら安定して暮らす」を実現できる
地方移住を考える多くの方が持つ「地域のために何かしたい」という気持ちと、「安定した収入で暮らしたい」という現実的なニーズ。地方公務員は、この両方を同時に満たせる数少ない選択肢のひとつです。
まとめ|「移住+転職」を同時に実現する現実的な道
社会人経験者採用・UIJターン枠は、地方移住と転職を同時に実現するための、現実的で有力なルートです。
このルートが向いている方:
- 民間での社会人経験が3〜5年以上ある
- 移住先の地域を決めており、その地域のために働きたい気持ちがある
- 地方での安定した生活基盤を築きたい
- リモートワークができない・転職が必要な状況で移住を考えている
準備のポイント:
- 移住候補地の採用情報を早めに確認する(年1回・秋実施が多い)
- 現地を訪問し、地域を知る体験を積む
- 「なぜこの地域か」「民間経験をどう活かすか」を具体的に準備する
- 複数の自治体を並行して受ける
地方移住を「生活の場を変えること」だけでなく、「働く場所も含めて地方に根を下ろすこと」として捉えるなら、移住先の自治体で働くという選択は非常に合理的です。
ロカスモは、あなたの移住と転職の一歩を応援しています。




