「関係人口」とは?総務省が推進する新しい地域との関わり方を解説

目次

はじめに|「移住」でも「観光」でもない、第三の選択肢

地方移住に興味はあるけれど、すぐに住民票を移す決断はできない。でも、気になる地域に何らかの形で関わり続けたい。

そんな方に知ってほしい概念が、「関係人口」です。

総務省が推進するこの考え方は、地方との関わり方の選択肢を大きく広げてくれます。「移住するかしないか」の二択ではなく、「どんな形で地域と関わるか」という問いへの答えのひとつです。

この記事では、総務省の公式資料をもとに、関係人口の定義・背景・具体的な関わり方を解説します。


「関係人口」とは何か

総務省による定義

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者のことです。(出典:総務省「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会報告書」平成30年1月)

つまり関係人口とは、その地域に住んでいるわけではないけれど、継続的・多様に地域と関わりを持つ人たちのことです。

なぜ「関係人口」という概念が生まれたか

地方圏は、人口減少・高齢化により地域づくりの担い手不足という課題に直面しているところ、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。(出典:同報告書)

地方の人口減少は、単に「人が少なくなる」だけでなく、地域を支える担い手が不足するという深刻な問題をもたらします。その解決策として、住民でない外部の人材を地域づくりに活かす「関係人口」という考え方が注目されています。

関係人口ポータルサイトの定義(総務省)

総務省の関係人口ポータルサイトでは、次のように説明されています。

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。(出典:総務省関係人口ポータルサイト soumu.go.jp)


「定住人口」「交流人口」との違い

3つの概念を整理しておきましょう。

区分定義主な例
定住人口その地域に住んでいる人住民・移住者
交流人口観光・旅行でその地域を訪れる人観光客・帰省者
関係人口住んでいないが継続的・多様に関わる人ふるさとワーホリ参加者・地域ボランティア・ふるさと住民登録者など

全国的な人口減少が続く中、すべての地域で「定住人口」を増やすことは現実的ではありません。そこで、「関係人口」を増やし、地域の担い手として活かしていくという発想が重要になっています。


「段階的な移住・交流」という考え方

関係人口の概念とセットで理解したいのが、段階的な移住・交流の考え方です。

総務省の検討会報告書では、次のように示されています。都市住民の将来の地方への移住願望を実現する観点から、中長期的な視点で、段階的な移住・定住を希望する者の想いを受け止め、段階的なニーズに対応した地域との多様な交流の機会を創出することが有効。移住希望者が移住に向けた階段を一歩一歩登ることができるよう、ライフステージに応じた多様な交流の入り口を用意し、階段の一段一段を低く感じることができるような施策を充実させるべき。(出典:同報告書)

報告書では、地域とのつながりを以下のように段階的に深めていくイメージが示されています。

ステップ制度・取組の例
観光・旅行地域への初めての訪問
地域交流・体験型子ども農山漁村交流・地域滞在型インターンシップ
地域滞在型ふるさとワーキングホリデー(数週間〜1ヶ月)
二地域居住主な生活拠点を持ちながら地域にも拠点を持つ
移住・定住住民票を移して完全移住

(出典:総務省「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会報告書」平成30年1月)

いきなり「完全移住」でなくても、どこかのステップから始めて、少しずつ地域との関係を深めていくことが推奨されています。


「ふるさとへの想いを受け止める」仕組みづくり

検討会報告書では、地方公共団体が関係人口を受け止めるための具体的な仕組みとして、次のようなものが提言されています。

「関係人口」が持つ、「ふるさと」の地域づくりに対して貢献したいという想いを受け止めるため、地方公共団体は、自らの団体の「関係人口」を認識し、それらの者に対して、地域と継続的なつながりを持つ機会を提供していくことが重要。その手法の一つとして、市町村が「関係人口」を募り、その取組に賛同する者との関わりを継続する仕組みを設けることを提言。(出典:同報告書)

具体的な取組例として示されているのは次の通りです。

  • 地域づくり活動(景観維持・地域の伝統行事等)への参加
  • ふるさとサポーター証(パブコメへの参加・公共施設利用等)の発行
  • まちづくり会議へ出席する機会の提供
  • 広報誌の送付

関係人口を深めるための国の制度

この「関係人口」という考え方を実現するために、国は複数の制度を整備しています。

ふるさとワーキングホリデー(総務省推進)

数週間〜1ヶ月程度、地域で働きながら滞在し、地域住民との交流を通じて地域の暮らしを学ぶプログラム。関係人口を生み出す「入口」として位置づけられています。

ふるさと住民登録制度(令和8年度スタート予定)

住所地以外の地域にアプリで登録し、地域情報の受け取りや担い手活動への参加ができる制度。関係人口を「見える化」する仕組みとして機能します。

地域おこし協力隊

最長3年間、都市から地方へ移住して地域協力活動に従事する制度。段階的移住の「最終ステップ手前」に位置します。


移住を検討している方へ|関係人口という入口

地方移住を考えているけれど、まだ踏み出せない方にとって、「関係人口になること」は移住への最初の一歩として機能します。

地域や地域の人々との多様な関わりを持つ者である「関係人口」を地域づくりに貢献する存在として認識し、必ずしも「移住」という形でなくとも、国民の一人一人が積極的に関心を持ち、想いを寄せる地域である「ふるさと」に対して貢献しようとする人々の動きを積極的に受け止め、人々と「ふるさと」とのより深い関わりを継続的に築く新たな仕組みを具体的に検討することが必要。(出典:同報告書)

大切なのは、「移住するかしないか」の決断を先延ばしにしながら、地域との関係を少しずつ積み上げていくことです。その積み重ねが、やがて「ここに移住したい」という確信につながります。


まとめ|「関係人口」は移住検討者の新しい選択肢

関係人口とは、住んでいなくても地域と深く関われる人のことです。総務省はこの考え方を政策の中心に据え、ふるさとワーキングホリデー・ふるさと住民登録制度・地域おこし協力隊など、段階的に地域との関係を深める仕組みを整備しています。

  • 「移住したい気持ちはあるが、まだ踏み出せない」→ まずふるさとワーホリやふるさと住民登録から
  • 「気になる地域と継続的につながりたい」→ ふるさと住民登録のベーシック登録から
  • 「本格的に地域に貢献したい」→ 地域おこし協力隊へ

どのステップから始めても、それはすべて「関係人口」として地域とつながる大切な一歩です。

ロカスモは、あなたと地域の関係づくりを応援しています。


関係人口をもっと深く知りたい方へ|おすすめ書籍

関係人口という概念をより深く理解したい方に、2冊の書籍を紹介します。

①『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション』

田中輝美 著 / 木楽舎 / 2017年

「関係人口」という言葉を世に広めた一冊です。著者の田中輝美さんは、総務省「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」にも参加したローカルジャーナリスト。

移住でも観光でもない第三の道として、地域と都市部の人々を結ぶ「関係案内所」という仕組みを島根県で実践した経験をもとに書かれています。「なぜ今、関係人口なのか」という問いへの答えが、事例とともに丁寧に語られています。関係人口について学ぶ入門書として最適な一冊です。

②『関係人口の社会学―人口減少時代の地域再生』

田中輝美 著 / 大阪大学出版会 / 2021年

①の著者が博士論文をもとに書き下ろした、関係人口の研究書です。島根県海士町・江津市・香川県まんのう町など各地の事例をもとに、関係人口が地域再生においてどのような役割を果たすかを社会学的に分析しています。

「関係人口が増えても人口は増えない。それでも地域は再生できるのか」という問いに正面から向き合った一冊。制度の背景にある理論を深く理解したい方におすすめです。

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