「地方移住を考えているけれど、実際いくらで家が買えるの?」
「都会と比べて、どれくらい広い家に住めるんだろう?」
そんな疑問を持つ人が、ここ数年で一気に増えています。
移住相談でも、住まいに関する悩みが必ずと言っていいほど出てきます。
しかし、SNSの断片的な情報や、ポータルサイトの“今売りに出ている物件”だけでは、移住先の住宅事情を正しくイメージするのは難しいですよね。
そこで本記事では、フラット35利用者調査(2024年度)という「全国の住宅購入データ」を使い、
三大都市圏(首都圏・近畿圏・東海圏)と地方(その他地域)で、家の値段と広さがどれだけ違うのか?
を、数字ベースでわかりやすく解説します。
読み終わるころには、
「地方ではこんな暮らしができるんだ」
「この価格でこの広さなら、移住も現実的かもしれない」
という感覚を掴めるはずです。
なぜフラット35のデータを見ると“移住の現実”がわかるのか?
住宅の価格は、地域・タイミング・物件の個別事情によってバラバラです。
しかし、フラット35利用者調査は全国数万件規模の住宅購入者のデータが集計されており、しかも「首都圏・近畿圏・東海圏・その他地域」の4区分で比較が可能です。
つまり、
- 一般の人が
- どの地域で
- どれくらいの値段の家を
- どれくらいの広さで買っているか
が、かなりリアルにわかるデータになっています。
そして、地方移住にとって大事なのは“その地域の一般的な暮らしがイメージできること”。
だからこそ、このデータを使う意味があります。
都会と地方では、家の値段が“最大1,200万円以上”違う
まずは最も気になる所要資金(家を買うために必要だった総額)の比較から見ていきます。
地方移住でよく検討される3つの住宅タイプは、次のとおりです。
- 建売住宅
- 中古戸建
- 注文住宅
これらについて、三大都市圏と地方で比べてみましょう。
① 建売住宅:都会と地方で「1,269万円」の差
建売住宅は、子育て世帯に最も選ばれやすい選択肢です。
完成済みの家を見て買えるため、間取りのイメージがしやすく、失敗が少ないのが特徴です。
しかし、価格差がかなり大きく表れています。
| 地域 | 所要資金(平均) |
|---|---|
| 首都圏 | 4,363万円 |
| その他地域(地方) | 3,094万円 |
差額は、
首都圏 − 地方 = −1,269万円
となり、1,000万円以上の開きがあります。
都会で建売を買うとなると、
「世帯年収700〜800万円でも厳しい」という声がよく出ますが、地方では同じ年収でも無理なく返せる価格帯に収まっているケースが多くなります。
さらに、地方の建売は都市部と違い、
- 駐車場2〜3台分
- 小さくても庭付き
- 収納多め
- お隣との距離もゆったり
といった特徴があり、暮らしの余白が大きいのもメリットです。
同じ“建売”でも、都会と地方では別物と言っていいほどの差が出ています。
② 中古戸建:地方は“最強コスパ”の住宅タイプ
移住者に最も選ばれやすいのが、中古戸建です。
理由はシンプルで、安くて広いからです。
| 地域 | 所要資金(平均) |
|---|---|
| 首都圏 | 3,222万円 |
| その他地域(地方) | 2,062万円 |
差額は、
首都圏 − 地方 = −1,160万円
となり、ここでも1,000万円以上の差がつきます。
しかも地方は、中古戸建の供給が非常に多く、
「築20〜30年・100〜130㎡」の物件が普通に手に入ります。
たとえば、地方の中古戸建では、
- 子ども部屋2つ
- ワークスペース
- 趣味部屋
- 庭で家庭菜園
- 複数台の車が停められるスペース
といった条件が“普通の価格”で叶うことも少なくありません。
移住者が中古戸建を選ぶ理由は、数字を見れば納得できるはずです。
③ 注文住宅:差は小さいが、暮らしの自由度が高い
注文住宅は、価格差が他のタイプほど大きくありません。
| 地域 | 所要資金(平均) |
|---|---|
| 首都圏 | 4,252万円 |
| その他地域(地方) | 3,742万円 |
差額は、おおよそ−510万円ほどです。
差が小さい理由としては、
- 建築費が全国的に高騰しており地域差が出にくい
- 地方でも人気エリアの土地はそれなりに高い
- 注文住宅は「こだわり」が反映されやすく、エリア差より施主の希望で金額が決まりやすい
といった点が挙げられます。
ただし「土地の広さ」「間取りの自由度」という意味では、やはり地方の方が圧倒的に理想を叶えやすいのが現実です。
都会と地方の“広さの差”は、ほぼ1部屋分
価格も大きく違いますが、それ以上に差が出るのが住宅面積(広さ)です。
特に中古戸建のデータが象徴的です。
中古戸建は地方が+16.6㎡(約10帖/1部屋分)広い
| 地域 | 住宅面積(㎡) |
|---|---|
| 首都圏 | 105.7㎡ |
| その他地域(地方) | 122.3㎡ |
差は、
地方 − 首都圏 = +16.6㎡
となり、これは約10帖ぶんに相当します。
子ども部屋やワークスペース、ホビールームが丸々1部屋つくれるレベルです。
地方移住で、
- テレワークの部屋が欲しい
- 子どもの遊びスペースを確保したい
といったニーズが叶いやすいのは、この“広さの余白”があるからです。
建売は地方が約+6.5㎡
建売住宅でも、地方の方がやや広い傾向があります。
都会の建売では、
- 土地が小さく、建物もコンパクトになりがち
- 道路や隣家との距離の制約が大きい
一方、地方の建売では、
- 土地が広く、設計の自由度が高い
- 駐車場や庭を確保したプランが多い
といった違いがあり、その差は毎日の暮らしの快適さにつながります。
注文住宅は地域差が小さい
注文住宅は全国的に100〜120㎡前後で安定しており、地域による面積差は出にくい傾向があります。
ただし、土地価格が安い地方の方が、
- 平屋
- 広めのLDK
- ウッドデッキやテラス
といった“理想の設計”を叶えやすいのは確かです。
年収倍率の違いからわかる「地方の家は背伸びしない」購入ができる
家を買うときに重要なのが、
年収倍率 = 所要資金 ÷ 世帯年収 です。
この数字が高すぎると、ローン返済が家計を圧迫しやすくなります。
中古戸建の年収倍率
| 地域 | 年収倍率 |
|---|---|
| 首都圏 | 5.8倍 |
| その他地域(地方) | 4.8倍 |
地方の方が、年収に対して無理のない価格で家を買っていることがわかります。
建売住宅の年収倍率
| 地域 | 年収倍率 |
|---|---|
| 首都圏 | 7.1倍 |
| その他地域(地方) | 6.1倍 |
年収倍率7倍を超えると、かなり返済負担が大きいラインです。
地方なら、同じ建売でも“安全圏に近い水準”まで抑えられていることがわかります。
数字からわかる「地方移住の住宅メリット」まとめ
ここまでのデータを整理すると、地方で家を買うメリットはかなり明確です。
① 同じ年収でも、地方なら無理なく住宅ローンを返せる
都会と地方では、所要資金も年収倍率も大きく違います。
年間返済額が数十万円〜100万円ちがうだけで、
毎月の生活の自由度は大きく変わります。
② 都会で“あきらめるしかなかった”広さが手に入る
地方では、中古戸建や建売でも、
- 子ども部屋がしっかり取れる
- 広いリビング
- ワークスペース
- 収納の余裕
- 庭・畑・ガレージ
といった条件を、現実的な価格で実現できます。
都会では「広さ」は真っ先に削られがちですが、地方では逆に暮らしの豊かさの源泉になります。
③ 暮らしの楽しみが増える
地方の家は、
- BBQ
- 家庭菜園
- サウナ小屋や物置小屋づくり
- 庭で子どもが走り回る
など、「家そのものが楽しみの中心」になりやすいのが特徴です。
都会では「家は寝に帰る場所」になりがちですが、
地方では「家そのものが暮らしの楽しみ」になっていきます。
④ 子育て・リモートワーク世帯との相性が抜群
広い家は、暮らしのストレスを大きく減らします。
子育てにも、在宅ワークにも、広さは立派な“資産”です。
地方移住の住まい選びで後悔しないために
最後に、地方で家を買うときのポイントを3つだけ押さえておきましょう。
① 「価格」ではなく「総費用」で見る
購入時の価格だけでなく、
- 修繕費
- 設備更新の費用(給湯器・エアコンなど)
- 冬の暖房費などの光熱費
といった維持費も含めて判断することが大切です。
② 中古戸建は“状態のチェック”が最重要
中古戸建は価格の魅力が大きい一方で、
- 屋根・外壁
- 給湯器・配管
- キッチン・浴室・トイレなど水回り
といった設備の経年劣化をしっかり確認しておく必要があります。
可能であれば、ホームインスペクション(住宅診断)や、
信頼できる工務店・不動産業者の目を通すことをおすすめします。
③ 移住先の“暮らし方”から逆算する
家探しは「物件ありき」で始めると、途中で迷子になりがちです。
そうではなく、
- どんな生活をしたい?
- 子どもはどんな環境で育てたい?
- 仕事のスタイルは?(リモート/通勤)
- 趣味や余暇をどう楽しみたい?
といった暮らし方のイメージから逆算して、
エリアや家のタイプを選んでいくと後悔が少なくなります。
まとめ:地方移住は「一段階上の暮らし」を叶える選択肢
フラット35のデータを見ていくと、都会と地方の住宅事情は「ほぼ別世界」です。
- 価格差は最大1,200万円以上
- 広さは約10帖ほどの差
- 年収倍率も地方の方が圧倒的に低い
地方移住で家を買うという選択肢は、
“やりたい暮らしを手に入れやすい環境”へのステップだと言えます。
もしあなたが今、
- 「この年収で家なんて買えるのかな?」
- 「子育てするには都市部の家は狭すぎる…」
と感じているなら、
一度“地方での住まい”を選択肢に入れてみてください。
数字が、暮らしの未来を変えるヒントをくれます。



