まず知ってほしい、地方の家探しのリアル
ネット検索では出会えない“隠れ物件”の存在
地方移住を考え始めたとき、多くの人が最初にぶつかる壁が住まいの確保です。
都市部では、ポータルサイトを検索して内見・契約という流れが一般的ですが、地方では事情が大きく異なります。
なぜなら、良い空き家ほどネットに出てこないからです。
小規模な自治体では、不動産会社そのものが少なく、持ち主が「誰に貸すか」を慎重に選ぶため、物件情報は
- 親族
- 近所
- 地域の役職者
- 古くからの顔なじみ
といった人的ネットワークの中で静かにやり取りされます。
この記事でわかること
この記事では、地方移住を考える人に向けて、
- どうすれば“見えない物件情報”にアクセスできるのか
- 空き家所有者に信頼されるための行動
- 契約トラブルを避ける方法
- 今日からできる、地域との関わり方
をロカスモ独自の視点で整理し、地方で家を探すうえでの実践ガイドとしてまとめました。
空き家バンクだけに頼らないほうがいい理由
空き家バンクは便利。でも「いい物件のすべて」ではない
自治体が運営する空き家バンクは、移住者にとって心強い制度です。
しかし、実際に利用してみると、こんな課題が見えてきます。
- 掲載まで時間がかかる
- 所有者の希望価格が高いまま出てくることがある
- 行政は仲介ができないため、法務面の助言は限定的
- 本当に良い空き家ほど“市場に出ない”
つまり、空き家バンクは入口として使うべきツールであり、
「ここだけ見れば家が見つかる」という仕組みではありません。


なぜ所有者は空き家を貸し渋るのか?
地方には空き家があふれているのに、いざ探すと貸してもらえない…。
移住者が必ず直面する疑問ですが、その背景には明確な心理があります。
- 「知らない人」への不安が大きい
近所とのトラブルは貸主の評判低下につながるため、慎重。 - 仏壇や位牌をどうするか問題
「先祖を手放すようで心苦しい」と感じる高齢者は多い。 - 居座りリスク
一度貸したら返ってこないのでは、という法的な不安。
家は地方では「資産」である以上に、「地域での顔」でもあるため、
所有者は「安心できる相手」にしか貸したくないのです。
移住者が感じやすい不安と地域側の視点
「よそ者」として入ることへの不安
地方では、顔見知りの関係が当たり前のため、移住者は「馴染めるだろうか」と不安を抱えがちです。
しかし、地域は決して排他的ではなく、
“丁寧に関わろうとする姿勢” を持つ人には温かく接してくれます。
「この地域ではどのようにするのが普通ですか?」
と素直に聞く姿勢が、信頼の第一歩です。
契約前にチェックすべき落とし穴
地方では、不動産会社を通さず直接やり取りするケースが増えます。
そのため、曖昧なまま契約すると後々トラブルになりやすいのが特徴です。
- 登記名義人が誰か
- 抵当権が残っていないか
- 修繕は誰が負担するのか
- 契約書を誰が作るのか
これらを確認しないと、結果的に高額な修繕費や生活トラブルにつながることもあります。
自治体の支援は進んでいる
相談員や専門スタッフが増えている
多くの自治体では、移住相談窓口や空き家担当を設置し、移住者の家探しを手厚くサポートしています。
例:
- 鳥取市
相談員が現地に同行し、自治会長への挨拶もサポート。 - 北杜市
不動産の専門家が空き家バンクの契約内容までフォロー。
「一人で家を探さなければならない」状況は減りつつあります。
所有者の気持ちを動かす“思い出の語り”
調査では、空き家所有者の多くが「手放しにくさの理由」を
- 思い出が詰まっている
- 使い道が決められない
と回答しています。
そこで効果的なのが、所有者の思い出話を丁寧に聞く“ストーリーテリング”。
家への認識が「負担」から「価値ある資源」へ変わり、
「誰かに使ってもらおう」という気持ちが芽生えます。
ロカスモが考える「地方の住まい探し」の本質
信頼は「お金」ではなく「汗」で買う
地方のコミュニティでは、
“地域を支える仲間かどうか” が最も重視されます。
- 草刈り
- 集落の清掃
- 祭りのお手伝い
- 地区行事への参加
こうした行動が、地域への参加意思を示す大切な合図になります。
長く住みたい意思が交渉の決め手になる
所有者の不安は、「すぐ出ていくのでは?」「雑に扱われるのでは?」という点です。
- この家の雰囲気が好き
- 丁寧に手を入れて暮らしたい
- 長く住み続けたい
といった“定住の意思”をしっかり伝えることで、信頼は大きく前進します。
今日からできる、具体的な行動ステップ
スナックと地域の“たまり場”に行くのは本当に有効
地方のリアルな物件情報は、
ネットではなくスナックや個人経営の飲食店で動きます。
- ママが情報のハブ
- 地元の顔役が集う
- 水面下の物件情報が出やすい
勇気を出して足を運ぶ価値は十分あります。
地域に受け入れられるための小さな習慣
- 毎日の挨拶
- 自治会長への訪問
- 1,000〜1,500円の手土産
- 草刈りや清掃への参加
こうした積み重ねが、「あの人は信頼できる」という評価につながります。
所有者の不安を減らす「定期借家契約」という選択肢
とくに効果的なのが、定期借家契約の提案です。
- 契約満了で確実に退去できる
- 「まずは2年のお試し」を提案できる
- 仏壇・位牌は“残置物”として残す工夫も可能
柔軟な姿勢は所有者への安心材料になります。
なお、国土交通省ウェブサイトにて、『定期賃貸住宅標準契約書』も公開されています。
最後に──誠実さが、理想の空き家を連れてくる
“お客様マインド”を手放してみる
地方で住まいを得ることは、
サービスを利用する側ではなく、地域を支える側へ回ることでもあります。
その覚悟が伝わると、ネットには出ない「宝物のような家」と出会える可能性が一気に高まります。
信頼の上にこそ始まる、豊かな田舎暮らし
田舎で暮らす魅力は、物件そのものより人とのつながりにあります。
- ゆっくり流れる時間
- 助け合うご近所づきあい
- 手を入れながら育てる暮らし
これらはすべて、信頼の土台があってこそ成立します。
あなたの誠実な姿勢は、きっと地域に伝わります。
焦らず、地域とのご縁を大切にしながら、理想の家と出会ってください。

